気刊びびび

なんか気が向いたら書く。

ゴルフ

 ask.fmとかいう本当にひどいWebサービスがあって、要は見ず知らずの他人が名も名乗らず好き勝手に質問という名の暴言を吐き捨てていけるという、もう存在自体がセキュリティホールというか重大な脆弱性というか、まるで人の心の邪悪だけをスプーンで丁寧に取り分けて高炉で精錬したような、本当に世が世なら人道に対する罪で有罪になるようなサービスなんですよ。当然アカウントを消したわけだけど、いくつか「これは残しといてもいいかな」って回答があったのでそのうちのひとつをここに貼り付けます。

質問: ゴルフをしたことはありますか?

回答:
 前の職場で「社長を囲んでゴルフをする会」というのがありましたね……。前日の夜12時に浜松で業務が終わると、そこから高速で伊豆に直行するわけですよ。伊豆には社のホヨージョとかいう施設があって、そこで会が開かれるわけですわな。ホヨージョ。語感的にはスペインの文化と見受けられますが、実際はどういうものなんでしょうね。深夜3時頃にようやく到着して、そのまま寝ますよね。聡明なみなさんはご存じのことかと思いますが、ゴルフって朝めっちゃ早いんですよね。翌朝5時半起きです。へろへろの状態でホヨージョの近くにあるゴルフ場へ行くわけです。社長を囲んで、睡眠時間2時間半の戦いが始まるわけですよ。死ねと。で、聡明なみなさんはご存じのことかと思いますが、ゴルフって3時くらいまで延々続くんですよ。案外めちゃくちゃ動き回るわけで、かなりの重労働ですよね。しかも会が開かれたのは7月上旬ですよ。聡明なみなさんはご存じのことかと思いますが、夏って熱いんですよ。

 やっとのことでゴルフが終わり、ホヨージョへ戻ります。普通こういうイベントは宿に戻るとおいしい料理が待ってると思うんですが、そうは取次が卸しません。そもそもこの会の目的は「社長に楽しんでいただく」なんですね。ゴルフも社長に楽しんでいただくための催し。であれば食事も。そう、どこの馬の骨とも知れない三つ星シェフが作った料理なんかでは、社長は喜ばないのです。かわいい自分の部下ががんばって作った料理にこそ、社長は感動を覚えるんですね。ええ話や。そういうわけで社員が厨房にどやどや集まって必死こいて料理を作ります。睡眠時間2時間半で半日炎天下でゴルフした直後にです。民放のバラエティじゃねえんだぞ。しかも社長が食べる料理と社員が食べる料理は、メニューは同じですが食材が違います。社長のは最高級食材です。僕ら社員はそんじょそこらの西友のバーゲン品です。兄弟とはいえ……序列はあるのだ……! 圧倒的に……!

 食事も終わってさて終わりと思ったら、全然そんなことはありません。社長は無類のお説教好き。そのまま怒濤の「社長の深イイ話」が始まります。一山いくらの自己啓発書に書いてそうなありがたいお話を、マズローの三段階欲求説などとっても知的な補足をはさみながらかれこれ4時間くらいお話ししてくれます。ありがてえ……! ありがてえ……! 時間も既に12時を回っています。社長の話は一向に終わりを迎える気配がありません。しかも2時間半睡眠、炎天下での半日ゴルフ、必死の料理大会の直後にこれです。まぶたの筋肉が唸りを上げる! ここはまさに悶絶の空中庭園といったところでありましょうか! 40キロのまぶたを懸命に持ち上げる! その姿はまるで眠気の暴走機関車であります! やややっ!? 隣に座ってる社員が落ちてしまった! 社長の機嫌がみるみる悪くなっていきます。「おい、眠いんだったらもう部屋に戻ったらいいんだぞ」と非常に不満げな様子。社長が帰った後でその社員は上司にひたすら詰められていたのは言うまでもありません。

 社長が喋り飽きてようやく帰ったのが深夜1時。やっと寝れる、と思ったらここで上司の「せっかくホヨージョにはカラオケもあるし、歌おう!」の一言! ぼくは賢明なので「いいですね!」と胃をぼろぼろにしながらもはせ参じます。その他の社員はほとんど部屋に戻り、気付けばカラオケルームにいるのはぼくと上司(課長)と別部署の責任者(課長補佐)のみというトホホな状況……! 上司の機嫌もすこぶる悪くなります。「親睦って目的も理解できないのか、あいつらは」という言葉には、さしものぼくも「ですよね~」と返すほかありません。結局3時半頃に開放されて眠りにつきます。

 さあ、朝だ。6時だよ。11時から業務が始まるよ。浜松まで片道3時間半の道のりを大急ぎで戻ろうね。休みだと思った!? バーカ! んなわけねーだろゲラゲラゲラ! ちなみに会当日は休みってことになってるけどな! ゲラゲラゲラ!

 そういうことがあったので僕はゴルフという競技がスポーツの中で一番嫌いです。