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気刊びびび

なんか気が向いたら書く。

C87同人誌感想(その2)

 冬コミで買った本の感想を引き続き書いていくよ。書いてるうちに自分が何言ってるかよく分かんなくなってくるんだけど、とにかくどの本も最高なんだ。買おう。読もう。

艦娘のいちばん長い日

 熊猫小屋発行、艦隊これくしょん本。多大な犠牲と損害を生み出し続けた深海棲艦との戦争、その惨禍は戦争が〝法律上〟終わったからといって収まるものではない。人ならざるものとして武器を取り、血を見続けてきた艦娘たちは終戦後、平和の中で孤立を深めていく。その矛盾を苦悶や抑圧といった形でひたすら内に押さえ込もうとする艦娘もいれば、外部へと爆発させる者もいた。――戦争の記憶が引き起こした戦後史の闇を描いた連作短編集は、冒頭の糸畑要氏の手になる表題作より始まる。この短編のみ戦争そのものを扱い、戦争末期から終結までの艦娘たちの葛藤を綴っている。そこからは視点を戦後史に移す。三丁目の夕日やビルマの竪琴から戦争後遺症、セクト闘争、アプレ犯罪まで、硬軟織り交ぜたさまざまな実在要素をモデルに艦娘の戦後を再構築していく。瞠目すべきは渡邉零氏「艦娘Aの手帳」とにのまえふみ氏「鋼鉄の猟犬と白詰草の少女」であろう。文体もアプローチも大きく異なるこの二作はある共通点を持っている。その共通点は後者の最終盤で、明示こそされないものの薄ぼんやりとした予感として読者に投げかけられる。かつての姉妹艦同士による銃撃戦。その果てに一人は生き残り、一人はその場を去る。だが、もう一人いたはずだ。彼女は――? a-park氏「証言~駆逐艦長月の戦争」や糸畑要氏「尊厳」は、前二作とは異なり極めて静謐に、退役艦娘の狂気を描いている。終戦後の矛盾を描いたものとしては、裏表紙にあるとおり本書が「決定版」といっても過言ではないのだろう。

『艦娘のいちばん長い日』
サークル:熊猫小屋
著者:糸畑要、某氏、a-park、地雷魚、dragoner、渡邉零、にのまえふみ(掲載順)
発行日:2014年10月25日
ジャンル:艦隊これくしょん
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Recollections

 ひなたぼっこ倶楽部発行、リリカルなのは本。ヴィヴィオが自宅で受け取った荷物の送り主は、自らの祖母である高町桃子からのものだった。中身は母親、なのはとフェイトの子供時代を写したアルバム。なのは、フェイトと三人で眺めるうち、一枚だけ二人が怒り顔で写っているものがあった。フェイト曰く、二人が初めてケンカをした時の写真だという――。「祖母である高町桃子」って自分で書いてて頭痛がしてきたんだけど、確かに桃子さんヴィヴィオからしたらおばあちゃんなんだよな……信じられない……。それはさておき、ほのぼのとした優しい描写に定評のあるひなたぼっこ倶楽部さんの新刊は「なのフェイの初めての喧嘩」に焦点を合わせた一作。二人の喧嘩の理由がいかにもなのフェイらしいというか、どこまでもいじらしくて思わず笑みがこぼれる。その喧嘩に対するすずかとアリサの対応も暖かく、アリサが最後に提案したアイデアには、「なのフェイは二人だけで成り立っている関係性ではない」ということを暖かくもはっきりと感じさせてくれる。幼少期であればアリサやすずか、はやて、大人になってからはヴィヴィオなど、たくさんの人に囲まれてこそのなのフェイなんだ。冬の寒さの中で、一読するとほっこりと温かな気分になれる、そんな素敵な一冊だ。

『Recollections』
サークル:ひなたぼっこ倶楽部
著者:ふらふら
発行日:2014年12月30日
ジャンル:魔法少女リリカルなのは
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イノセントスノー

 ahAha発行、リリカルなのは本。イノセント時空、大学受験のために上京していたなのはとフェイトは、大雪のために帰れなくなる。かつてフェイトは大事故に巻き込まれたところをなのはに助けられており、なのははそのせいで怪我をして、夢を諦めざるを得なくなっていた。付き合ってはいるが、互いにそのことを引きずっている二人。翌朝、宿泊先でフェイトが目を覚ますと、なのはが姿を消していて――。過去の傷と将来の夢、現在の葛藤の中で揺れ動くなのはとフェイトを、柔らかいタッチで静謐に描いた一作。ここが崖だとして、なのはが落ちたらどうするか、と尋ねられ、自分を犠牲にしてでも――なのはがそうしてくれたように――なのはを助けると即答するフェイト。それに対する「ずっと後悔してるの/フェイトちゃんを助けたこと……/間違いだったって/だから/フェイトちゃんもいつでも/手を放して」というなのはの嘘が、読者に不安感を煽る。純粋に好きだという思いと、夢を諦めさせてしまったという罪悪感を浮き彫りにしたその翌朝、なのはが姿を消すことで物語は極限まで緊張を帯びる。やがて見つかったなのはがフェイトに言った言葉は、しかしそれはどこまでも前向きな、救いの言葉だった。中盤の不安が浄化され、さわやかな読後感を読者に与える。最後の一コマに思わずため息が漏れる、しんみりといい話だった。

『イノセントスノー』
サークル:ahAha
著者:あはは
発行日:2014年12月30日
ジャンル:魔法少女リリカルなのは
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