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気刊びびび

なんか気が向いたら書く。

C87同人誌感想(その1)

感想

 冬コミで買った本の感想をまとめていこうと思う。ひとつひとつが結構長いので、まずは4冊ということで。感想を書きたい本はまだまだあるので、それは次回位以降の更新でまとめていきたい。

リリカルなのは VS DOGDAYS フロニャルド大決戦!!!!!

 黎明ネルトリンゲン発行、リリカルなのは・DOG DAYS本。なのはとフェイトはそれぞれDD世界に飛ばされ、なのははビスコッティ陣営として、フェイトはガレット陣営として、互いが敵陣営にいるとは知らないままに戦興行に参加することになり――。あとがきによれば、もともと商業誌に出すはずだった原稿が「クオリティ的に公式と勘違いされかねない」という理由でお蔵入りになったので、それを(許可を得て)同人誌として出したとのこと。お蔵入りになったのも納得のできで、これ以上ないくらいに上手くなのは・DDを融合させている。何が上手いって、「なのはとフェイトが再び全力で剣(?)を交える」という、ある種ありがちではある展開に対し、あまりにも綺麗な説明を与えているところ。「訓練のための模擬戦闘」のようなよく見る説明とは一線を画し*1、戦闘に必然性を持たせているためすんなりと内容にのめり込める。そして戦闘中のキャラクターの躍動感。日常を描いた作品がほとんどのサークルではあるが、戦闘描写もお手の物というところをまざまざと見せつけられる。注目は、戦場で敵同士として相まみえた瞬間のなのはとフェイトの表情だ。26ページ3コマ目のなのは、27ページ大ゴマのフェイトの表情はいずれも、夢見ていながらも実現できていなかった「再びの全力バトル」に血湧き肉躍り、笑みを隠しきれずにいる様子がありありと描かれている。そして最終盤に至り、事態は思わぬ方向へ。続刊を出す予定は今のところないとのことだが、この後の展開に思いを馳せて胸躍らすのも楽しい一冊だ。

『リリカルなのは VS DOGDAYS フロニャルド大決戦!!!!!』
サークル:黎明ネルトリンゲン
著者:稀周悠希・黒井みめい
発行日:2014年12月30日
ジャンル:魔法少女リリカルなのは・DOG DAYS
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THE BOOK OF THE BLACKENED 3

 モノクロームほりっく発行、リリカルなのは本。闇の書がはやての手に渡る以前の主・ハロルトは偶然にもなのはやはやてと同じ世界の住人だった。20世紀前半、中欧。若き党指導者のハロルトは、守護騎士達の力を借りながら国家を戦争へと導いていく。そしてその裏には、ヴィータと瓜二つであるハロルトの妹と、その妹を殺した魔導師の存在があった――。第二次世界大戦時ドイツをモデルにしたシリーズの三作目。一作目ではハロルトの人となりと既に亡くなった妹の存在が提示され、二作目では敵対する魔導師が登場する。それに対して今作では物語はあまり進行しない。ハロルトの国が戦線において劣勢に立たされていること、“例のモノ”なる存在と、それに関連する“隠しがたいものは何か――火だ”という言葉が提示されたに過ぎない。にもかかわらず、今作はシリーズ中もっとも読ませる展開になっていたように思う。大きいのは間の使い方だ。プロットの消化に気をとられてか勇み足な印象を受ける前二作と異なり、今作は吹き出しのないコマが多数を占め、その結果として意味深な空気感が非常によく出ている。敵対する魔導師の目的はなんなのか、“例のモノ”の正体とは、そしてハロルトの行く末は。そういった謎が、たっぷりと保った間のおかげではっきりと浮き彫りになっていく。第二次世界大戦時ドイツの描写もリアルで、台詞回しや構図も秀逸。映画を観るような感覚で楽しめる一品。

『THE BOOK OF THE BLACKENED 3』
サークル:モノクロームほりっく
著者:セトユーキ
発行日:2014年12月30日
ジャンル:魔法少女リリカルなのは
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ゆらゆらばり

 まっくろけ発行、艦隊これくしょん(由良張)本。夕張の異動を知らされた由良は、夕張に自らの思いを伝えようとするが、鈍感な夕張はその言葉の意味を汲むことができず――。こと恋愛に関しては鈍な夕張に振り回され、異動までのわずかな時間を喧嘩した状態で過ごしてしまう由良の葛藤をコミカルに描いた一作。由良の強情さと繊細さが生き生きと現れている。夕張の異動まで数日の猶予しかないのに夕張と言葉を交わすことすらできず、あまつさえ仲直りしようと駆け寄る夕張を無視したり払いのけたり。しかしそんな強情も長続きはせず、由良はついには倒れてしまう。由良の夢を描いた20ページ目、夕張がもの悲しげな顔をしているのは、由良の中の素直な気持ちが表れているのだろう。そして目が覚めた時、そこには夕張が。この期に及んでも自分からは何も言葉を出せずにいる由良の繊細さ。倒れた由良が心配で枕元につきっきりになりながらも、由良が目覚めるやその場から逃げ出そうとする夕張の繊細さ。このどうしようもなく弱々しい二人がすれ違いの果てにやっとこ結ばれるのは、ある種の救いですらあるということをはっきりと感じさせる。最後はやはり夕張の鈍感さに由良が怒り出すというコミカルな展開で締めているが、その実、由良張のツボをすべて押さえたといっても過言ではない良作なのだ。

『ゆらゆらばり』
サークル:まっくろけ
著者:サカガミ
発行日:2014年12月29日
ジャンル:艦隊これくしょん

リリカル★男子会

 犬丈夫発行、リリカルなのは本。ザフィーラに飲みに誘われたヴァイスは、女性揃いの八神家飲みだと早合点して二つ返事に参加するが、蓋を開けてみれば店にいたのはクロノ・ユーノ・ヴェロッサ。潤いもクソもないリリカル男子会はひたすらに色恋の話で盛り上がり――。ザフィーラが好きで仕方ないサークルの新作は、ヘテロの恋愛話にもかかわらず女性が紙面に一切出てこない斬新な構成。ひたすら惚気話などの間接描写でイチャラブややきもきが語られていく。そういった恋愛描写は直接描くのが常道であり、むしろそれ以外の発想はなかなか出てこないところであるが、「男子会」という設定を用い、男同士の会話のみで男女の恋愛を語るという構造は秀逸の一言に尽きる。間接照明が直接照明に比べて光を和らげるのと同様に、恋愛話も間接描写にすると解像度が一段下がる。そのおかげでかえって想像力がかき立てられるのには、上手い作りだと感心するばかりだ。妻がいながらシスコンのクロノ、姉が大好きなヴェロッサ、幼なじみこそ至高のユーノが気炎を吐く中、それを宥めるザフィーラ。さすがの落ち着きようかと思いきや、そのザフィーラから飛び出した言葉には、はやザフィ大好きっ子の僕も思わずにんまりと言ったところだ。カプ厨や恋愛もの好きであれば終始ニヤニヤしながら読むことのできる快作。

『リリカル★男子会』
サークル:犬丈夫
著者:黒
発行日:2014年12月30日
ジャンル:魔法少女リリカルなのは

*1:無論それが悪いと言いたいわけではないが。